遺産・相続財産のあらまし
遺産/相続財産のあらまし
遺産や相続財産とは、亡くなった方が残した「権利と義務」のことをいいます。つまり、遺産には、不動産や金融資産といった、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も含まれるということです。
遺産をどのように分割するのかは、ルールによって定められていますので、しっかりと把握しておきましょう。適当に分けられると思ったら思わぬトラブルが起きることもありますので事前の確認が大切となります。
まず大切なのは遺言
遺産分割の際、何よりも重要になるのが遺言です。
我々の生活は法律の元で送られるものです。法律が大前提であって、法律を破れば罰せられるのですが、遺言は法律よりも優先順位が上です。遺産分割の方法は法律によって定められていますが、それはあくまでも「遺言がない場合」です。
遺言があればそちらが何よりも優先されますので、そうそうトラブルになることはないのですが、問題は遺言がなかった時です。遺言がなければ法律に則って遺産を分割することになるのですが、少々面倒なことも多いのです。
それでは、具体的にどのようなものが遺産として該当するのかみていきましょう。
プラスの財産
- 不動産(土地・建物) ・・・宅地・居宅・農地・店舗・貸地など
- 不動産上の権利・・・借地権・地上権など
- 金融資産・・・現金・預貯金・有価証券・小切手・株式・国債・社債・債権・貸付金・売掛金・手形債権など
- 動産・・・車・家財・骨董品・宝石・貴金属など
- その他・・・著作権・特許権など
マイナスの財産
- 借金・・・借入金・買掛金・手形債務・振出小切手など
- 公租公課・・・未払の所得税・住民税・固定資産税
- 保証債務・・・他人の保証人になっている場合など
- その他・・・未払費用・未払利息・未払の医療費・預かり敷金など
遺産に該当しないもの
- 受取人指定のある生命保険金
- 生活保護受給権
- 扶養請求権
- 財産分与請求権
などがあります。
分けられない遺産もある
現金であれば、単純に額面だけを分割することが出来ますので、相続人の人数で「割れない」ことはありませんが割れない遺産もあるのです。
その代表が不動産です。
不動産を遺した場合、不動産を分割するのは難しいのですが、話がまとまらないのであれば分割しなければならないのです。
この場合の方法として、不動産はAさんに、その代わり現金の遺産はBさんにといったように、遺産の総額が平等になるような協議を行うべきでしょう。
何もかも法律に基づいて分割するとなれば、難しいものまで分割しなければならなくなりますが、参加者全員が納得すれば問題ないのです。
不動産であれば最悪人数分で分割することも出来るのですが、権利が複雑になってしまい、実質土地としての活用が出来なくなることも想定されます。
また、自動車のように分離そのものが出来ないものもありますので、どのようなものが良いのかを考えた上で、どのように分割するのか。そのためにも、相続人を全員集めることが重要になりますので、戸籍を確認するなどして遺産相続人が誰なのかを確認しておきましょう。
「全員」とは一体誰を指すのかが分かっていなければ、結局のところ協議そのものが意味のないものになってしまうので、手間をかけて何も得られないものになってしまいます。このような問題を発生させたくないのであれば、故人に対して遺言書を作成してもらうよう進言しておきましょう。
遺産分割協議が無効になる場合
仮に「遺言がない場合を」少し考えてみましょう。
遺産をどのように分配するのかは遺産分割協議によって決定することになります。相続人全員が合意することによって「最終決定」となります。
これだけ聞けば「案外あっさり決まるのではないか」と思うことでしょう。ですが問題が二つほどあります。
まずは相続人を「全員」用意しなければなりません。端的に言えば、仮に隠し子がいたとすれば隠し子も呼ばなければならないのです。ともすればそれまで知らなかったものの、戸籍を確認したら実は隠し子がいる。
この場合、当然ですが隠し子にも遺産分配の権利が発生しますので、遺産分割協議に参加しなければなりません。もしもですが、隠し子を参加させずに遺産分割協議を行ってどのように分配するのか決まったとしても、残念ながら認められません。心情的に考えたら隠し子なんて認めたくないと思うでしょう。ですが法律では隠し子もまた、遺産を受け取る権利があるのです。
遺産分割協議とは、相続人「全員の合意」が求められますので、隠し子の存在を知らずに、とりあえず息子たちだけで協議を行って決定したとしても、隠し子が発覚したら一から協議をやり直さなければならないのです。
厳しいルールではありますが、相続人が全員参加していない場合、つまりは一人でも参加出来ない場合、遺産分割協議そのものが無効になってしまうのです。
遺産の評価をどうするか?
遺産の評価方法は、一般的には、時価で換算することになります。
ただ、遺産の評価は、評価方法により相続税の評価額が変わってきたり、民法と税法で、遺産の対象とその評価の扱いが異なるなど専門的な判断が必要です。
相続財産は、一定額を超えた場合には相続税の課税額を決定するために一定の評価がされます。評価額によって、相続できる額、税金も変わってきます。
相続に詳しい税理士、不動産鑑定士に相談する必要がありますので、適切な専門家を当事務所でご紹介いたします。
財産をどう相続するか
それぞれの財産についてプラスかマイナスか調査し、その財産が相続人にとって必要か不要かを判断していただきます。その判断ができたら、次にその財産を相続するかどうかを決めます。
相続の方法は次の3つしかありません。
相続財産を単純承認する
すべての相続財産をそのまま相続する選択です。このまま具体的な相続手続きに進みます。
相続財産を放棄する
何も受け継がない選択で、これを相続放棄・遺産放棄と呼びます。マイナスの財産の方が多いときに、よく選択される方法です。
相続が開始したことを知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所に対して相続放棄の申立をします。
相続財産を限定承認する
財産が差し引きでプラスであれば、プラスの部分だけ相続する選択です。
相続が開始されたことを知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所に対して限定承認の申立をします。
一見この手続なら安心に思われますが、共同相続人全員が共同して申し立てなければならず、一人でも単純承認した相続人がいると申し立てが出来ないため、実際には困難を伴うこともあるようです。
なお、相続財産の使い込みをしたり隠したりすると、単純承認とみなされますので、後から共同相続人の一人が財産をごまかしていたことがわかると大変なことになります。
単純承認をした場合、次のステップとして相続放棄をしなかった相続人の間で財産の分け方を決める話し合いをします。
限定承認と単純承認についての解説はこちらをご覧ください。
筆者
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・兵庫県司法書士会所属/日本司法書士会連合会
・兵庫県行政書士会所属/日本行政書士会連合会
相続・遺言・登記・後見など司法書士(行政書士)が扱う業務は多岐に渡ります。普段の生活では耳馴染みもなく、初めて問題に対峙された時にどの様に対処をすれば良いか困惑されることも多いかと思います。士業という専門家として、「どうしたら分かりやすくお伝えできるだろうか」「ご希望に沿う形での解決は何だろうか」と日々考え、円滑な解決とともに、お客様に寄り添う司法書士(行政書士)でありたいと考えています。
司法書士・行政書士に関する業務
- 2024年7月22日相続に関わる手続き遺言書はあるけど遺言執行者が決まっていない
- 2023年8月10日相続に関わる手続き株式を相続して名義を変更するには
- 2023年7月18日相続の基礎知識遺産を残さないという考えも
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