遺産分割協議がまとまらない時
遺産をどうするのか。映画やドラマではなく、現実は少々面倒なものです。特に相続人が複数いる場合、相続人全員の合意を形成しなければなりませんので、実はとても大変なのです。
実際、遺産分割協議が上手くいかないと嘆いている人も多いようですが、その場合、どうすれば良いのでしょうか?
遺産分割調停を行おう
遺産分割協議が上手くいかないのであれば、出来ることは一つだけです。それは家庭裁判所に対しての遺産分割調停申し立てです。裁判?と思うかもしれませんが、「裁判だから嫌だ」といっていても残念ながら話は進みません。法的見地からの意見によって答えを導き出せますので、家庭裁判所に対してアクションを起こしましょう。
家庭裁判所にて行われる遺産分割調停とは、決して裁判所が命令を出すものではなく、裁判所が仲裁に入って、その上で合意を目指すものです。ドラマや映画のように、いきなり弁護士と検事がやってきて、どちらが正しいのか専門用語をまくしたてて、よく分からないまま判決が出るということではありません。その一方で、遺産分割調停には確定判決と同一の効力もありますので、遺産分割の話も進みます。
短期間での解決は難しい
遺産分割調停は、先にも出たように決して裁判所が双方の話を聞いて「じゃあこうしなさい」と命令を下すものではなく、双方の言い分を聞いて合意を目指すものです。つまり、解決しなければならない課題がたくさんある場合には、当然ですが時間がかかります。
実際、遺産分割調停は短期間で終わるケースの方が珍しいとさえいわれています。揉めている原因も多々あるとは思いますが、遺産分割調停ではそれらすべてを解決し、誰がどのくらい相続するのかを決めるため、どうしても時間がかかるのです。
それでも当事者同士で話をするよりは良いでしょう。当事者同士で話し合いを行っても、結局は感情論のまま、先に進まないと嘆いている人もいるかと思いますが、遺産分割調停であれば合意形成を目指しつつも、最終的な判断には確定判決と同一の効力もありますので、決まりさえすれば話は楽です。
遺産分割調停でも納得出来ない
遺産分割調停を行ったものの、それでも納得出来ない場合、残念ながら訴訟ということになります。こちらは先に話したような、ドラマや映画でも見られるような裁判です。なぜ訴えるのかということを明確にし、弁護士がそれぞれの法定代理人となって双方の言い分を主張。それらを裁判官が決定するというものです。当然ですがお金もかかりますし、何かと面倒な展開になるのは言うまでもありませんが、遺産相続に関して納得出来ないのであれば、ここまで戦うという手段もあるということです。
納得出来るのであれば、わざわざ訴訟を起こす必要はありませんが、納得出来ないのであれば、「納得出来ない」という意思表示を行わなければなりません。それがいわば「訴訟」という形になるのです。訴訟になると双方が妥協も必要だなという気持ちが芽生えますので、再度調停を申し立てるケースもあります。
遺産分割調停でも、訴訟でも納得出来ない
様々な形で話し合いが行われたものの、それでも相続人すべてが納得の合意形成を得られないのであれば、裁判所に決定します。それまでの話し合いを元に、家庭裁判所の裁判官が決めるのです。つまり、これは「話し合い」ではなく「判決」です。もちろんこちらも拘束力はありますし、不服であれば異議申し立ても可能ですが、当然その分時間がかかります。
このような展開を考えると、たとえ100%納得出来ない場合であっても、膨大な手間とストレスを天秤にかけることが必要です。そして、ある程度のラインで妥協することが大切になってくるのはいうまでもありません。
筆者
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・兵庫県司法書士会所属/日本司法書士会連合会
・兵庫県行政書士会所属/日本行政書士会連合会
相続・遺言・登記・後見など司法書士(行政書士)が扱う業務は多岐に渡ります。普段の生活では耳馴染みもなく、初めて問題に対峙された時にどの様に対処をすれば良いか困惑されることも多いかと思います。士業という専門家として、「どうしたら分かりやすくお伝えできるだろうか」「ご希望に沿う形での解決は何だろうか」と日々考え、円滑な解決とともに、お客様に寄り添う司法書士(行政書士)でありたいと考えています。
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