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故人の預金が引き出されていたら

故人の預貯金口座から、お金を引き出されている痕跡がある場合、どうすれば良いのでしょうか?

信じられない!…でもよくあるのです

この手の話、モラルの面から考えると「信じられない」と思うかもしれませんが、実は良くある話です。

というのも、悪意を持って行うケースもあれば、善意によって行われるケースもあるのです。

例えば故人が既に意識朦朧としていたり、あるいは判断能力がなくなっていたり。それでもお世話をしている場合、身内が「お金もかかるし」ということで口座からお金を引き出す。

このように聞けば「仕方ないかな」と思われるかもしれません。

つまり、このような話は決して珍しいものではないのです。

良くある話だからこそ、「当たり前」のように思ってしまい、普通に口座からお金を引き出している人も多いのですが、この場合、必要な範囲であれば認められるもののそれ以外、つまり、故人の口座から引き出したお金を自分の趣味に使ったりすれば横領罪に該当する可能性もあります。
ですが、仮に身内が使ったとしても「なぜ」「どのような理由で」まで立証するのは、残念ながら不可能に近いのが実情です。善意で行っていたものに「使い過ぎなのではないか」と指摘するのも気が引けるという人もいるでしょう。本来のルールとしては、使いこんだ分は本来の遺産相続分から除外するのがベストなのですが、なかなかそうもいかないのが現状です。

使い込みを防ぐという考え方

 そのため、使いこまれたお金を戻してもらうのではなく、使い込みそのものを防ぐことが求められます。有効な手段としては成年後見人制度です。成年後見人制度を申請すると、弁護士や司法書士が第三者に選任されます。
これにより、不要なお金を引き出すことができなくなります。成年後見人は財産を現状維持しようと努めてくれますので、勝手に口座からお金を下されるようなことはなくなるでしょう。
その一方で、生前贈与等、生前に遺産相続対策を行うことが困難になります。「勝手にお金を使わないでくれ、でも遺産相続のために今から対策したい」といった都合の良い話は通用しなくなってしまいます。
ですので、そのようなことにならないよう、慎重に判断しなければなりません。故人がどのような状況なのかを考えるだけではなく、相続人同士のモラルも問われる問題だと覚えておきましょう。

筆者

小林 朋広
小林 朋広司法書士・行政書士
・兵庫県司法書士会所属/日本司法書士会連合会
・兵庫県行政書士会所属/日本行政書士会連合会
相続・遺言・登記・後見など司法書士(行政書士)が扱う業務は多岐に渡ります。普段の生活では耳馴染みもなく、初めて問題に対峙された時にどの様に対処をすれば良いか困惑されることも多いかと思います。士業という専門家として、「どうしたら分かりやすくお伝えできるだろうか」「ご希望に沿う形での解決は何だろうか」と日々考え、円滑な解決とともに、お客様に寄り添う司法書士(行政書士)でありたいと考えています。

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