遺産分割対策の基本は遺言
遺産分割は肉親同士の骨肉の争いを生むことにもなりかねませんが、分けなければならない現実もあります。
だからこそ肉親が争うことになってしまうのですが、それはいわば遺言がない場合のみです。生前に遺言を残しておけば、この問題は「解決できる」ではなく、そもそも発生しないのです。
遺言は法律よりも上になる
遺言がない場合、遺産をどのように分割するのかはある程度法律によってベースができています。その上で、遺産相続人が全員で協議をして決めます。
遺産分割協議は相続人全員の出席が求められています。仮にですが、隠し子がいれば隠し子を探して出席してもらわなければなりませんし、隠し子がいないとしても、遠くに住んでいる親戚にも参加してもらうなり、同意してもらうなど少々面倒なものですが、これらはあくまでも「遺言がない場合の遺産相続の決定方法」です。
つまり、遺言があれば遺産分割協議は不要です。遺言に関しては法律で定められている分割方法よりも優先順位が上になります。法律でも「遺言を優先する」と明記されていますので、遺された人間の骨肉の争いを防ぐためには、遺言書が何より効果的なのです。
遺留分に気を付ける
遺言を遺しておけば誰にどのくらい遺産を相続してもらうのかが決まりますが、一つだけ注意点があります。
それは遺留分です。遺留分とは、一定の法定相続人が最低限もらえる分です。つまり、仮に遺産が1億円あるとして、相続人が4人だとすれば、基本的には2500万円ずつとなりますが、遺言によって「A一人にだけ1億円」というのは結局トラブルの元になってしまいますので、いくら遺言ではあっても、やはり不平等はトラブルの元になってしまいます。この点も考慮しておかなければなりません。
生前に決めておくメリット
遺言を生前に遺しておくメリットは多々あります。前途のようにトラブル防止になるのはもちろんですが、自らの意志を尊重してもらえる点が大きいでしょう。
相続人が複数いる場合、どうしても遺産相続は分割しなければならなくなるのですが、遺言を遺さずに自分自身が亡くなってしまった場合、遺された人間だけで判断しなければなりません。
そのため、故人が意図していたものとは違った形の相続になってしまう可能性もあります。本来であれば自分でも誰に何を継がせるのか等を考えているのではないでしょうか。ですが遺言を遺さずに亡くなってしまった場合、いわば「緊急事態」です。遺された人間で決めなければならないので、そこに遺産を持っていた故人の遺志は反映されないのです。
その点、遺言を遺しておけば自分の意志を反映させることが出来るのです。誰に何をどれくらい継がせるのか。
それらを「指示」できることになるのです。
生前にという考え方
遺言として遺すくらいであれば生前に授けてしまった方が良いのではないか、との考えもあるでしょう。
どうせ継いでもらうのであれば、生前に授けて継いでもらった方が良い。この理屈も分からなくはないのですが、生前贈与にも税金がかかります。
但し、年間110万円未満の贈与であれば税金はかかりませんので、税金が発生するラインを上手く考えるのも一つの手法です。
この点も法律が関わってくる部分になるのですが、遺言をどのようにして作成すれば良いのか、司法書士や弁護士に相談してみるのも手です。
自分だけの独断で勝手に「遺言書だ」と遺すのではなく、法律に則った形式で遺言書を作れば、いざという時がいつ訪れても自分の意思を反映させることができます。生前に遺言を遺す事例が増えているのは、自分の意志を反映させつつ、残された人間のトラブル防止にもなるからなのです。
筆者
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・兵庫県司法書士会所属/日本司法書士会連合会
・兵庫県行政書士会所属/日本行政書士会連合会
相続・遺言・登記・後見など司法書士(行政書士)が扱う業務は多岐に渡ります。普段の生活では耳馴染みもなく、初めて問題に対峙された時にどの様に対処をすれば良いか困惑されることも多いかと思います。士業という専門家として、「どうしたら分かりやすくお伝えできるだろうか」「ご希望に沿う形での解決は何だろうか」と日々考え、円滑な解決とともに、お客様に寄り添う司法書士(行政書士)でありたいと考えています。
司法書士・行政書士に関する業務
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