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限定承認と単純承認の違いとは?

ドラマや映画などでも何かとテーマになる相続。遺産目当ての事件をテーマにした作品など数えればきりがありませんが、現実でも相続の問題はとても複雑です。

遺産はすべてもらえる」と考えている人もいるのですが、実際にはとても細かく定められています。

例えば限定承認単純承認。どのような制度なのかすぐに説明できる人の方が珍しいのではないでしょうか。そこで、この二つの承認制度をチェックしてみましょう。

限定承認とは

限定承認とは、簡単に言えば相続を受けた人がプラスの財産の範囲の中でマイナスの財産を引き継ぐ制度です。

プラスの財産とマイナスの財産についてはこちらの記事をご覧ください。

遺産・相続財産のあらまし>

財産を持っている人間が亡くなったら遺産を相続することになるのですが、遺産は必ずしも「プラス」とは限りません。

そうです、借金負債もまた「遺産」の一部なのです。

仮に亡くなった人が借金しかなかった場合、「遺産相続」とは、言葉は悪いですが「借金を引き継ぐかどうか」なのです。

ですが、いきなり借金を背負うことになるのはやはり難しいものです。そこで、亡くなった人のマイナス分を背負わなくても良いための制度、それが「限定承認」です。

借金だけであれば相続放棄という形の方が良いのですが、土地はある。家もある。でも借金もある。この場合、プラスの遺産とマイナスの遺産があります。マイナスの遺産を背負うことなく、プラスの分を限定的に相続する。それが限定承認です。

単純承認とは

一方の単純承認は話が分かりやすいです。

借金であろうが、大きな貯蓄や財産であろうが、すべてを引き受けること。これが単純承認になります。

遺産がすべて黒字という場合には、基本的には単純承認になるでしょう。つまり、多くの人がイメージしている「遺産相続」はこちらになります。

限定承認はかなりお得なのでは?

借金や負債を認めず、プラスの分だけを限定的に引き継ぐ。それが限定承認になります。

基本的には遺産の範囲内で借金を返済し、それでも借金が残った場合には引き継がず、財産として残ったら受け継ぐものです。

この話だけを聞くと、とでも便利なように思うのですが、もちろんデメリットもあります。

まず、手続きがとても難しい点です。

財産目録を作成し、さらには相続人全員連名にて家庭裁判所に申し立てを行うのですが、財産目録の作成だけでも骨の折れる作業です。
なぜなら、土地や家屋、自動車の場合、評価額を記載しなければなりません。

つまり、自分達だけで勝手に作れるのではなく、評価出来る人間に協力してもらわなければなりません。もちろんお金がかかります。さらに、限定承認の申し立て可能期間は亡くなってから3か月になりますので、迅速に動かなければなりません。

相続人全員連名と言うのも難しいものです。なぜなら、親戚が多ければその分相続人が増えるからです。

親戚が多い人であれば、戸籍を見て初めて知るような相続人の存在を知るケースもあります。どこに住んでいるのかも分からないケースもあります。そんな場合でも、当然ですが「連名」になりますので、初対面であろうが連名してもらわなければならないのです。

このように、限定承認は制度としては良いものですが、実際に利用するとなるととても面倒なものです。相続の年間件数がおよそ100万件と言われていますが、限定承認は1000件前後、つまりは0.1%以下ということになりますので、いかに大変なのものなのかが分かるのではないでしょうか。

筆者

小林 朋広
小林 朋広司法書士・行政書士
・兵庫県司法書士会所属/日本司法書士会連合会
・兵庫県行政書士会所属/日本行政書士会連合会
相続・遺言・登記・後見など司法書士(行政書士)が扱う業務は多岐に渡ります。普段の生活では耳馴染みもなく、初めて問題に対峙された時にどの様に対処をすれば良いか困惑されることも多いかと思います。士業という専門家として、「どうしたら分かりやすくお伝えできるだろうか」「ご希望に沿う形での解決は何だろうか」と日々考え、円滑な解決とともに、お客様に寄り添う司法書士(行政書士)でありたいと考えています。

相続放棄と限定承認に関する記事はこちら

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